23.会計の知識をもつと交渉力が格段にアップする?
「かけひき」をするだけであれば、利益をそこそこ出して銀行の行動原理だけ押さえておけば問題ありません。
ただ、会計の知識を持っていると交渉力は確実にアップします。銀行交渉に強い経営者は例外なく会計を理解しています。
社長に求められる会計力
しかしながら、それは「決算書を作れる・読める」とかそういうものではありません。特に最近は会計ルールの変更が毎年のようにあるので、そんなものを押さえようとしても仕方がない・経営には直接役立たないと割り切っています。
では、どんなところを押さえているのでしょうか。
①銀行員との共通言語として会計を押さえているレベル。
②交渉に有利になるように財政状態をコントロールできるレベル。
という2つのレベルがあります。
ここでは、「私は決算書の読み方が分からないから...」というコンプレックスを持っている方向けに、これだけはというポイントに絞って見ていきたいと思います。
銀行員との共通言語は日商簿記2級?!
まず、①の銀行員との共通言語として会計を押さえているレベルとは、だいたい簿記2級レベル位のことを言います。
貸借対照表と損益計算書の構造が分かっていて、二期比較をしたときに、元帳を見れば原因を説明できるレベル。
また、売上高・経常利益の月次推移グラフを見ながら銀行に傾向を説明し、今後の経営方針・財務方針についてパワーポイントを使って説明できるレベル。
この時点で中小企業100社に1社くらいしかないはずですから、頭ひとつ抜けることになろうかと思います。
銀行員との交渉にはいい意味での数値の操作力が必要!
続いて、②「交渉に有利になるように財政状態をコントロールできるレベル」とは、決算書ベースで財務指標が上がるように行動を起こせるレベルです。
例えば、「棚卸回転率を上げるために期末の棚卸残高を減らす」とか、「流動比率を上げるために、日ごろ受け取ったらすぐ割引いている受取手形を、期末だけ割らずに置いておく」、あるいは逆に「売上債権回転率を上げるために手形割って残高を減らす」といったアクションを作戦立てて、実行できるレベル。
ちなみに業種にもよりますが、銀行は「売上高月商○か月(通常2~3か月、6か月が融資限度のような)」を融資額の一つの基準に考えています。
このことから、例えば、支払リスクを負わないのであれば、利ざや(リベート)だけが売上に計上される業態よりも、商品(材料)を仕入れて商品(製品)を売るという構造を作った方が、同じ経済効果の取引であっても、銀行は資金を出しやすくなります。
もちろんこれは表面上のことなので、よく説明をすれば理解してくれるところではあるのですが、銀行には「異動」がつきものなので、その度に説明しなおして理解してもらうというのも結構大変です。
更に考える方となると、財務指標が良くなる月を計算して決算月とするなどという方もいらっしゃいます。
こうなると1000人に1人ぐらいしかいないでしょう、といよりも普通の銀行員のレベルを完全に凌駕していますので、「交渉に有利」なのは言うまでもありません。これも会計の知識を持っていることで交渉しやすくなることの一つでしょう。
駆け引きレベルの交渉は会計事務所頼りで問題なし!
ただ、冒頭申し上げた通り、「かけひき」レベルの交渉であれば、会計事務所と「評価を上げるために具体的にどのような行動をすべきか」を相談しながら決算を迎え、実際の交渉時には、会社の現状をよく表す資料や会計事務所の作ってくれた分析帳票や経営計画などの、十分な説明資料を以て対応するとともに、事前に会計事務所から「特に決算書・業績等でアピールすべき点はどこか」「抱えているリスクとその対策案をどう説明すべきか」を確認しておいた上で、それでも「数値について何か質問があったら会計事務所に直接連絡してもらって結構です」と伝えるだけで十分です。