22.赤字の場合でも借入を受けるにはどうすれば良いのか?
大原則は、「借りたいと言って来る企業を疑い、もう良いよといっている企業に貸したがる」です。
赤字にも暗黙の区分がある?
つまり、「赤字になってお金がないので貸して下さい」これはアウトです。一般的には一期の赤字はそれほど問題ありません。
ちなみに「赤字」とは「税引後利益」がマイナスとなることです。
これが「経常利益」がマイナスだとちょっと問題になります。二期連続だと「担保または保証人のない」融資はかなり厳しくなります。
三期連続だと「貸付けが大きすぎて潰せない」銀行を除いて難しくなります。また、「二期連続」で「債務超過」になるとかなり厳しくなります。これは現在取引のある銀行についてです。
赤字になってから、「今の銀行が貸してくれないから、新たな銀行を見つける」というのは至難の業で、紹介でもない限り、門前払いされることがほとんどでしょう。
私の中で唯一可能性があると思っているのが、人情論になりますが、「社長が地方出身者」の場合の「出身地の地方銀行のちょっと遠い県外支店」つまり同郷つながりの場合です。過去に「よく貸してくれましたね!」という実績が数件あります。
赤字転落しそうになった場合の対処法
さて、正攻法に移ります。
第一に、赤字に陥る原因のほとんどが「大口取引先の取引量の減少」によるものでしょうから、毎月試算表を作っていれば、利益がどう変化するかは分かるはずです。
そして、そのような劇的な変化があった事を、融資の担当者に試算表を渡す際に早めに報告しておくのです。
そして、「決算書が出来上がる前に、次期の借入返済分相当額を今のうちに借りておきたい」と相談を持ちかけます。
つまり「時間的に十分な余裕をもって銀行に相談する」これが一番なのです。そうすることで、担当者や支店長も作戦を考えてくれます。
この赤字が以下に「一時的か」を審査係に説明する方法を一緒に考えてくれるのです。
債務超過でない場合には、この方法で対処ができることが多いのではないかと思います。ちなみに赤字に転落する見込みがある場合で、毎月試算表ができていない、また、自分で事業計画書が作れない場合には、会計事務所に早めに相談しましょう。
これが無い事で交渉が後手に回るというのが最悪です。
数値で赤字からの復活を魅せる
対策の2番目が、「事業計画書」の作成とそれに基づく「資金繰り予定表」の作成です。
当然ですが、「返してくれる見込みの無い先」に、貸してくれる訳がありません。如何にして「返せる見込みがあるか」を説明する事が大切です。
できれば受注見込み等の資料、そして「実現可能な」赤字解消の為の施策を箇条書きにして、その削減効果を金額ベースで示すようにしましょう。
ここでは、「成長戦略を描く為」の事業計画は必要とされていません。「金を借りる為の」事業計画が必要とされているということを認識することも大切です。
つまり、早く作る事と、その実現可能性の高さこそが大切なのです。間違っても、「今期までは売上は対前年3%減であったが、当期からは15%増とする」などのような、「実現可能性の低い」事業計画を提出する様な事が無いように気をつけて下さい。作るだけ時間の無駄です。
さらに、担当者を呼びつけておいて「社長の思いを語るだけ」というのもアウトです。
「形容詞よりも数字」
ということを意識しておいて下さい。
また、いつも借りる時には「担当者を呼んで」いるのに、急に「社長自ら支店に挨拶に行く」というのもやめましょう。行っても行かなくても結果は変わりません。逆に「何があったのですか?」と怪しまれます。
また、そういう人はいないと思いますが、説明が上手く出来そうも無いということで、「赤字になって初めて」会計事務所に立ち会ってもらう、というのも印象が悪いので注意して下さい。
できれば日頃から「会計事務所と銀行をつなげておく」ことを心がけておきましょう。あとは「赤字にしない努力」も必要です。
「支払った半分が経費に出来て、解約すると保険料が戻ってくる性質の保険」があります。
私はその「節税」効果については懐疑的立場を取っています(それはまたどこかで説明します)が、「利益平準化のための繰延べ」として使うのであれば、意味があると思います。
つまり、黒字の時に保険料を支払っておいて利益を圧縮し、いよいよ二期連続赤字になりそうだとなったら「解約」して利益計上するのです。
保険の解約益は「特別利益」になってしまいますが、「二期連続赤字で債務超過」よりはずっとマシという事になります。
ちなみに「解約返戻金」は決算書に載りませんので、できれば年に一度の「決算報告」の際に、簿外情報として銀行に提供しておきたいところです。
なお、いよいよ不味くなると、非正規ルートを使って融資を引出そう、または、それを勧める人が現れたりしますが、私の経験では成功した例がありません。
仮に、「そういう方法で私は借りられました」という人がいるとしても、その人はそのルートを使わずとも借りられた可能性があるということを覚えておいて頂ければと思います。