21.銀行との交渉に有効なことは?
銀行との交渉が有利に働くようにするには、とにかく「銀行が貸しやすい状況を作る」ことです。
もっというと、「担当者が上司を説得しやすい、稟議書を書きやすい状況を作る」ということが大切です。
つまり、銀行にとって「貸さないと損をする」と思われるようにすることです。一番良いのは「他行も貸したがっているよ、貸してくれないと他行にシェアを移しちゃうかもしれないよ」という思わせる状態を作ることです。
一番代表的なのは「借入額の上限をこちらで設定して銀行に公表する」という方法です。
ただし、銀行側が考える貸出上限以下の借入でやっていけることが条件になります。
銀行サイドで考える借入限度額は、一般的に「税引後当期利益の10倍または月商6か月分」なので、このラインを下回る微妙なラインで調整を行います。
というよりも、こうなるように利益と売上を「良い意味で」調整するのです。
利益を出さずに銀行と交渉というのはあり得ません。
銀行情報を集めよ!
それから、銀行動向などの情報を常に集める努力をするということも大切です。
できれば、メイン銀行の担当者には四半期に一度は試算表を渡して、当社の状況を把握しておいてもらい、さらに、最近の借入商品の動向や、今必要がなくとも、当社に当てはまる商品や制度がないかなどを聞いておきます。
制度融資でも銀行によって把握している制度が違うことがありますので、色々な銀行から情報を引き出すことが大切です。
さらに、メイン以外の銀行にも半期に一度は同じように試算表を渡す機会を作ってもらいましょう。
他銀行との関係を意識させるための秘策
そして、ここからがポイント!
「同じ日で、銀行同士が微妙にかち合ってしまう時間に面談を設定」する
のです。銀行員はだいたい似たようなバッグを持って、似たようなスーツを着ていますから、お互いに誰と言わなくとも分かるものです。
嫌味なく堂々とやるなら、「今日は銀行さんに対する説明デーです」と一応断っておきましょう。
こうすることで、銀行員は嫌が応にも他行を意識することになります。
そして、次に会った時「○○銀行は何か言っていました?」と言ってくれる銀行があれば、「その銀行がHOT!」ということになります。
とにかく、情報交換をまめに行って、「こちらを気にかけてくれる」状態を作っておくのが基本です。
銀行への気遣いも忘れずに...
それと銀行さんを呼ぶのであれば「午前中」が基本です。間違っても「5・10日の午後2時」とかは迷惑になるのでやめましょう。
こういった相手側の事情を考慮できるかどうかも大切です。
さらに、気遣いついでにもう一つ。期末の各行の預金残高の比率についても気を遣いましょう。
銀行は企業への貸付の評価は「借入から預金を差し引いた」額...つまり、ネットで評価するので、預貸比率を気にします。
例えば貸付け1,000万円に対して金利1.5%として、預金残高が700万円ある場合には、実質的に300万円の貸出に対して5%の利率を受けとっていると評価するので、貸付残高と預金残高の比率が重要に、特に他行と比べて自行が不利になっていないかということが重要となるのです。
できるなら、借入残高に応じた預金残高に、期末の預金残高を調整しておきましょう。次の日の朝一番に戻してもらっても構いません。 「当行からの借入を、他行に預けているのか」なんて思われないようにしておきたいところです。
交渉がテーブルにのったときには既に結果は出ている?
とにかく、世の中なんでもそうだと思いますが、「交渉の前に実質的に交渉は終わっている」というのは、銀行交渉も同じです。
どれだけこちらが情報を持っているか、そして、銀行サイドにこちらの検討材料が渡っているかが大切です。
こちらの渡した情報を「有利に解釈するも、不利に解釈するも銀行の支店長と担当者次第」です。こちらの自由にはなりません。
実際に決算説明の場や、試算表の説明の場に立ち会わせて頂くことも多いのですが、同じ決算書を渡しているのにもかかわらず、銀行によって評価が様々であることには、本当に驚きます。
複数行と取引しておくことで、「合わない支店長、担当者」の時期が来ることのリスクを、最大限防御しておくことも「銀行との交渉を進めるのに有効」であることは間違いありません。