18.金利交渉はすることができるの?
普通に利益を出していれば、2つの作戦と3つの交渉パターンの組み合わせで交渉が可能です。
まず2つの作戦とは、
A:自社の財務改善
B:複数金融機関と取引し、適度な緊張感を保つ
続いて、3つの交渉パターンとは、
①プロパー融資
②保証協会付融資(制度融資)からプロパー融資への切り替え
③高い利率の制度融資から低い利率の制度融資への切り替え
ということになります。
その前に少し横道にそれますが、大事なところですので、「普通に利益を出していれば」という前提条件について説明しておきましょう。
「利益が出ない」には大きく分けて、次の2つのパターンがあります。
①役員報酬が過大で赤字
②役員報酬を一般従業員並みに下げても赤字
パターンの方は利益が出る程度まで役員報酬を下げましょう。
借入は税引後利益のおおよそ10倍が限度です。つまり、借入の10分の1程度が税引後利益となるように役員報酬を設定すれば良いわけです。
法人税より高い?!社長の所得税(役員報酬)
法人税アレルギーを持っている経営者をよくお見かけしますが、今の税制からすると「所得税(住民税含む)+社会保険料(含む会社負担分)」は法人税より高いことをご存知でしょうか?
つまり、所得税や社会保険料は毎月引かれているので、重税感がないだけで、法人税の支払は「計画性」の問題なのです。
「利益を出すと税務調査に入られやすくなる?」
それは確かにそうかもしれませんが、脱税さえしてなければ、税務調査は「今期の経費か、時期以降の経費か」が争点となるだけなので、正しく対処すれば、なんの問題もありません。
また、借入に有利な透明性の高い決算書は税務署対策にも有効なので、ここを意識して決算書を作ることで、税務調査に入られる可能性も低くなります。
ということで、単純に出すべき利益を出していないだけ、または、その加減をしらないだけという方を多くお見かけしますので、「借入が上手くいかない」という方は一度ご自身の決算方針を見直してみて下さい。
ちなみに②の理由で利益が出ていない場合、借入云々の前に、事業について、頑張ればどうなるのか、それともビジネスモデル的に無理なのか、早めに結論を出すようにしたいこところです。
金利交渉のための2つの作戦
さて、本題に戻ります。2つの作戦、3つの交渉パターンを組み合わせて交渉します。
まずは①~③のどの交渉パターンにも共通しますので、2つの作戦について、軽く説明しておきましょう。
政府系金融機関を除いて、一般的に銀行は何にも言わなければ、自分から利率を下げましょうと勧めてくれることはありません。
また、こちらに何の情報もないことが分かると、知らないことを良いことに、無理な理屈をつけて金利維持を図ろうとします。つまり、「少しは勉強していますよ」という態度を見せることが大切なのです。
作戦① 相見積もりを取ろう!
そして、その「勉強」で一番手っ取り早いのが、Bの「相見積もりをとる」ことなのです。
正しい知識を持った(多くの)銀行員であれば、リスク分散の大切さを分かっていますので、「浮気と考えて意地悪される」ことはないはずです。
心配であれば、今借りている銀行に相談してみてください。
作戦② 財務状態の改善度合いを把握しよう
そして、他の銀行の評価を知ることで、自社では気づかなかったAの「財務状態の改善度合」が見えてきますので、それをもって銀行と交渉をするのです。
では、3つの交渉パターンをそれぞれ見ていきましょう。
プロパー融資の場合の金利交渉術
①のプロパー融資の場合ですが、AとBの組み合わせに加えて、借入時期、実質利率、借入シェアを使って交渉します。
まず、時期的には9月の中間決算が一番の狙い目です。銀行は、9月の中間決算と3月の本決算の時にキャンペーンをはりますが、行員の成績を見た場合に、利息収入が半年分計算できる9月の中間決算の方が自然と力が入ると言います。
次に実質利率つまり「借入マイナス預金」のネットに対する利子率で交渉するのです。
具体的には「売上の入金口座にして平常時(または平均)の残高でいくら残します」というと、銀行にしてみれば、例えば1,000万円を貸付けて金利1.5%にしても、預金残高が700万円あれば、実質的には300万円の貸出に対して5%の利率を受けとっているのと同じことになります。これを交渉材料に使うのです。
最後に借入シェアですが、銀行は「右にならえ」が大好きで、「他行が貸すならうちも貸す、他行が引くならうちも引く」という行動原理に基づいて動きますので、「相対的に貴行の銀行のシェアを引き上げたい」ということで、これを交渉することが可能です。
銀行にしていれば、1,000万円貸すのも、1億貸すのも調達コストを除いては、同じような固定的コストがかかりますので、どうせ貸すなら、効率の良い大きなロットを狙いたいものなのです。
ただし、金利を競わせるといっても、「金利が0.1%下がった」ところで1,000万円につき年1万円です。
変なところにこだわって、「不採算先」になってしまわないように気をつけましょう。
当然、銀行も不採算先に対しては足が遠のきます。また、中小企業にとって借入は出資と同じですので、安定的に資金を供給してくれる出資者かどうか、判断基準はここに置くべきです。
単純に金利の高低で判断すべきではないということを付け加えておきたいと思います。
保証協会付融資からプロパー融資に切り替える際の金利交渉術
続いて、②の保証協会付融資(制度融資)からプロパーへの切り替え。
一般的な制度融資の場合は、どの銀行と交渉しても利率は同じなので、プロパーでの融資を受けられるようになって、初めて金利交渉のステージに上がるということになります。
プロパー融資が一行もない内は、どの銀行も保証協会を付けようとします。
ここはひとつのハードルで、これを超えないことには保証協会の保証限度枠という上限に縛られてしまいます。
このハードルを越えるための最もポピュラーな作戦は、「プロパー融資をしてくれる金融機関を探す」です。
また、「制度融資は考えてない」と言い切る「度胸を持つ」ことも非常に大切です。
そのためにも、担当者には十分な情報提供を定期的に行い、9月や3月の「銀行の決算」をターゲットに交渉を進めていきましょう。
制度融資間で切り替えをする際の金利交渉術
最後に③高い利率の制度融資から低い利率の制度融資への切り替えについて。
よくあるのが、当座貸越契約を使った保証協会付「事業者ローン」という、「枠」を決めていつでも借りられる商品から、長期資金への借り換えです。
この事業者ローン、利息が元本に自動組み入れ(つまり複利)となり、非常に高金利です。
これを長期の制度融資に借り換えるだけで、金利が2%近く下がることがあります。
これを金利交渉というかは微妙ですが、知らずに使っていると損をすることがありますので、知識として持っていて損はないと思います。